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「比較」することはコンセプト設定やビジュアル計画において重要な役割を果たします。デザインは情報で、情報は差異から生まれます。比較することで見つかった差異は、コンセプト設定やビジュアル計画のためのヒントになります。

ある商品の広告を頼まれたら、ライバル商品との比較はもちろん、クライアント企業とライバル企業、ユーザー層と非ユーザー層の違いなど、あらゆる角度や尺度で徹底的に比較します。さまざまな比較を重ねることで、どう伝えるか?どう表すか?を決めるために必要な差異が、より多く見つかります。



比べる方法はいくらでもある。いつも複数の方法で比較しよう。

ひと言に「比較」と言ってもたくさんの方法があります。比べて違いを際立たせるものから、類似点を探し出し比喩する方法まで。ここではいくつかの比較の方法と、メリットや注意点などを紹介します。

体を使った比較

指でつまむ動作をして「ちょっとだけ」を表現したり、両手を大きく広げて「こんなにたくさん!」を表現したり。体を使う比較は共通認識を持ちやすく、最も原始的なコミュニケーションとも言えます。

一方、体を使った表現には注意を払う必要もあります。肌の色はもちろん、あらゆる身体的な表現には細心の配慮が必要です。

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標準化された数値を使った比較

メートルやグラムなど、標準化された数値を用いた比較です。「これまでより何グラム軽い」とか「いつもより何ml増量中」などの表現が見られます。お金や時間の比較もここに分類されると思います。

具体的に認識でき、同じ単位を使う世界中の人々と意識の共有が可能です。距離や重さ以外にも光、音、色など、さまざまなものごとが単位で定義されています。

ただし、その単位の使い方を知識として学んだ者の間でしかコミュニケーションが図れないことに注意してください。何ルーメン明るいとか、何ニュートン強いとかって聞いてもあまりピンとこないですよね。ガロンやフィートもそうです。自分の使っている単位や数値の知識を相手と共有できているか注意が必要です。

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換算して分かりやすくする

「東京ドーム何杯分」とか「レモン何個分」、「現在の貨幣価値にすると何円」など、分かりやすいものを基準にして比較します。

ちなみに私はステーキ店などで見られるグラム表示が苦手です。メニューに200gとか書かれてもピンとこないんです。そこで、分かりやすいものに換算してみます。たとえば200gのステーキはマクドナルドのパティ約4.4枚分になります。空腹時ならもう少し食べられそうですね。

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インフォグラフィックスで可視化された比較

グラフやチャートなどのインフォグラフィックスにすることも有効な手法です。数値や単位で言葉や文にするよりも、ずっと感覚的にものごとを伝えることができます。またインフォグラフィックスにすることは差異を表現するだけでなく、情報整理の技術としても役立ちます。

インフォグラフィックスによる比較は、主に6つに分類されます。1.表(テーブル)、2.図表(グラフ)、3.図式(チャート)、4.図譜(スコア)、5.図解(イラストレーション)、6.地図(マップ)。これらの方法を単独、または組み合わせてものごとを比較し、差異や共通点を探ります。

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比喩(メタファー)を使った比較

何かに言い換えたり、見立てたり。比喩はものや現象の類似を見つける行為です。上手に見立てられた比喩表現は、見る人の心に強い印象を残します。海外の広告なんかに比喩表現が多く見られますので、参考にしてみてはいかがでしょうか。個人的にはHeinekenの広告が上手だと思います。

比喩表現を相手に伝えるには、共通の体験や価値観を持っていることが前提になります。雪を見たことがない人に雪の白さは伝わりません。相手の理解を推察して比喩表現を使いましょう。

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際立たせる比較

比喩や見立てとは逆に、ものの違いを際立たせる方法もあります。ただ単に「異なる」ものではなく、「遠い意味のもの」「反対のもの」を比較の対象として用意します。古いものと新しいもの、銃器とペン、都会と自然、男性と女性、若者と老人など、対局にあるものを比較対象として用いることで差異を強調し、違いを際立たせることができます。

上手に際立たせることができれば、効果的に印象が分断されインパクトある表現になります。

見立てたり際立たせたりして比較する行為は、似ているものをグルーピングし、異なるものを区別する整理の基本になります。上手に差異や類似点を見つけてコンセプト設定に役立てましょう。

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概念や考え方の比較

概念や考え方や理念、企業の方針やブランドイメージなど、具体的なものや現象でなくても比較が可能です。「優しいのか厳しいのか」「進歩的なのか伝統的なのか」「利益至上主義か顧客第一主義か」など、比較の軸や尺度はいくらでもあります。

例えばナチュラル志向を打ち出した広告なんかは、企業の理念や立ち位置、商品に対する姿勢を、他社やライバル商品と比較して差別化した結果ではないかと思います。

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いくつもの比較方法を試して、最適な軸や尺度を見つけよう

この他にも比較の方法はいくらでもあります。視点や角度を変えてさまざまな方法で比べましょう。
比較する対象を探し、比較する方法を考え、それに基づいて差異を発見していきます。

いかに素晴らしい軸や尺度を見つけられるかがコンセプトの良し悪しに影響します。
情報は差異から生まれます。良いデザイン、良いコンセプトを見つけるために、まずは比べてみましょう。



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