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1971年、芸術家マルセル・デュシャンがニューヨークの美術展に出展した「泉」という作品がスキャンダルを起こします。この作品、デュシャンのサインがあっただけで(しかも偽名)ただの市販の便器でした。

当時のスキャンダルは、「市販の便器」が「美術展」に展示されたことへの驚きが発端となっています。人々が常識として思い描いていた「美術作品」ではない市販の便器が、転置(置き場所を変る)され美術展に出展されたのです。

デュシャンの「泉」のように、転置することで強い印象や衝撃を与えることができます。置き場所を変える「転置」という考えをビジュアル計画やコンセプト設計に応用し、デザインにインパクトと世界観を持たせましょう。



転置することで生まれる「違和感」を利用する

本来あってはならないものがあると、人はショックを受けます。このショックの原因は「違和感」。日常的な経験の結果獲得されたものと場所との関係や、ものと言葉との関係が否定されたときに生じます。転置することで意図的に違和感を作り出せれば、見るものに強い印象を与え、活発な精神活動を呼び起こすことも可能です。

ビジュアル計画やコンセプト設定の際に「転置」という方法を持ち込んでみると、強い印象や衝撃を発するデザインが生まれるかもしれません。

日常に非日常を持ち込む

見慣れた光景にありえないものを紛れ込ませてみましょう。いつも通勤で使っている電車の乗客が全員ストーム・トルーパーだったら?たまたま乗ったタクシーの運転手がダース・ベイダーだったら?ちょっとした衝撃ですよね?

日常生活に場違いなものを出現させることで違和感が生み出すことができます。また日常に非日常を持ち込むことは、見たこともない世界観を創る可能性も秘めていると思います。

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常識の中に非常識を持ち込む

常識の中に非常識を転置してみましょう。人々が持っている常識と離れれば離れるほど、違和感が大きくなり、強い印象や衝撃が生まれます。物理的な約束から暗黙のルールまで、身の回りには数多くの常識があります。常識の中に非常識を上手に転置するためには、何が常識なのか普段からきっちり認識しておくことが大切だと思います。

バナナの皮を剥くときに緊張しないのは、中から出てくるものがバナナであることを常識として知っているからです。中からイチゴやスイカが出てくるような非常識で衝撃的な事態は起こりません。

ところで、バナナの皮を剥くと中からバナナが出てくるという常識、きっちり認識していましたか?非常識を再現・表現することは、見落としがちな常識をいかに認識するかにかかってくると思います。

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まとめ

あってはならない場所に、場違いなものや言葉を転置してみましょう。常識とされている場所や日常の空間に、非常識や非日常を紛れ込ませてみましょう。
そこで生まれた違和感は見るものに強い印象や衝撃を与えます。

インパクトある非常識や非日常を効果的に紛れ込ませるために、見落としがちな「常識」や「日常」に普段から目を向けてみましょう。

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