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ブランド・ストーリーを「ラダー(はしご)」を用いて抽出する方法を紹介します。
消費者や顧客が受けるメリットや、商品やサービスの強みや独自性、理念や姿勢といった、ブランド・ストーリーに必要な要素を見つけ、整理し、ひとつの文脈にする際に用いられる方法です。

「ラダー」を使ったブランドストーリーの抽出は本来ブランディングの段階で用いられますが、独自のストーリーを導き出すこの手法は、デザインのコンセプト設定にも役立ちます。



メリットと強みをラダーでつなげる

消費者や顧客が受けるメリットを「ニーズ(欲求)」、商品やサービスが持つ強みや独自性を「シーズ(種)」とし、「はしご型の枠(ラダー)」に書き込みます。
ニーズ側には「生活者としてのメリット」、「消費者としてのメリット」を。シーズ側には「体感できる商品の独自性」、「独自性を支える体感できない独自性」を書き込んでいきます。
書き込まれた隣り合う要素が「だから」と「なぜなら」で矛盾せずに結びつくようにします。

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ニーズとは

ニーズは消費者・顧客の欲求。企業はこの欲求を満たすために商品やサービスを通して消費者・顧客にメリット(ベネフィット)を提供します。
ラダーには「生活者として」と「消費者として」の2段階に分けてメリットを書き込みます。

生活者としてのメリット

商品・サービスがもたらす、生活の充実を実現するメリット。商品・サービスを利用して、自分の生活がどう変化するのか、どんな風に豊かにるのかなど。利用者自信の話などもこれにあたります。

消費者としてのメリット

商品・サービスを利用することで直接得ることができるメリット。食べ物では「美味しい」「健康によい」など、シャンプーでは「美しくツヤのある髪」など。商品・サービスと消費者の関係の中で生まれます。

シーズとは

企業が提供する商品・サービスの技術やノウハウの種。新たな価値やマーケットを生み出す商品は、シーズを中心に生み出されたものが多いと言われます。iphoneがシーズ志向の代表例です。新たな価値やマーケットどころか、ライフスタイルまで変えてしまいましたね。

ラダーにはニーズのときと同様に2段階に分けてメリットを書き込んでいきます。

消費者が体験できる独自の技術やノウハウ

消費者が直接体験できる商品・サービスの独自性。「消費者としてのメリット」とつながっています。商品・サービスに利用されている独自の技術や成分など。

消費者が体感できない根本的な技術やノウハウ

「消費者が直接体験できる商品・サービスの独自性」の基となる技術やノウハウ。 独自の商品・サービスを実現するための技術や、その技術を開発するまでのドラマなど。企業の志などもここに含まれます。

ブランドストーリーの具体例

架空の商品・サービスをもとに具体的にラダーを埋めてみます。商品を仮にオーガニックシャンプーとしてみましょう。

「生活者としてのメリット」
たくさんの人から「自分にあっている」と思われている。

「消費者としてのメリット」
頭皮を傷めずに、健康的で美しい髪が手に入る。

「消費者が体験できる独自性」
天然由来でありながら高い美髪効果を得られる、頭皮に低刺激な美容成分“X”」を使用。

「消費者が体感できない根本的な技術やノウハウ」
低刺激でありながら高い美髪効果を実現するため、長い年月をかけて研究した独自の技術で天然由来の美容成分“X”の抽出に成功。全ての人に美しい髪を届けたいと思う企業の想いが実を結んだ。

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ラダーに書き込んだ内容をまとめると、オーガニックシャンプーのブランドストーリーが見えてきます。

オーガニックシャンプーのブランドストーリー
多くの人から「自分にあっている」と思われるのは、頭皮を傷めずに健康的で美しい髪を手に入れるために肌への刺激が少ないながらも美髪効果が高い天然由来の美容成分“X”を配合した製品だから。
長い年月をかけて研究した独自の技術で天然由来の美容成分“X”を抽出することに成功しました。全ての人に美しい髪を届けたいと思う私たちの想いが実を結びました。

まとめると
頭皮を傷めずに美しい髪が手に入るので、多くの人から「自分にあっている」と思われています。
長い年月をかけて天然美容成分“X”の抽出に成功。美しい髪を届けたいという想いが実を結びました。

まとめられた100字程度のブランドストーリーには、企業や商品・サービスの独自性と消費者のメリットが詰め込まれています。
この文脈が競合との差異であり、優位なポジションを発見するためのヒントにもなるのです。



ブランドストーリー抽出時の留意点

競合と比較した表現はNG

競合との比較を用いると、競合に振り回されやすくブレやすいストーリーができてしまいます。他社製品より何割安いとか、何グラム多い、何々より美味しいなどの表現は避けましょう。
競合と争うことをせずに、独自のポジションを築くことができるストーリーを求めます。

独自のキーワードが入るとGood

ありきたりな言葉を並べただけでは、オリジナリティが無いと思われてしまうことも。独自性が高い技術やノウハウから生まれた商品・サービスであれば、オリジナルのキーワードが見つかるはず。
導き出したブランドストーリーにオリジナルのキーワードが入っていなければ、もう一度ブランドストーリーの抽出工程を見直した方がいいかもしれません。

ブランドストーリーやラダーについての解説はもとより、ブランディングについての基本的なことを安原智樹さんの「ブランディングの基本 この1冊ですべてわかる」で、より詳しく学ぶことができます。
デザイナー向けの本ではないですが、参考になる部分が多くあります。

さいごに

ラダーを使ったブランドストーリーの抽出は、本来ブランディングで用いられる方法。ですが、しっかりと商品やサービスと向き合って独自性や差異やポジションを見つけられるこの方法は、デザインのコンセプトを設定する際のヒントになるのではないでしょうか?

また、ブランドストーリーの抽出方法を一つでも知っておけば、でプランナーやコンサルタントによるブランディングの話にクリエイターとして食い込めるかもしれません。
常に上流工程を意識しておくことで、今よりずっとクリエイティブな仕事に関われる可能性が上がります。ラダーを用いたブランドストーリーの抽出方法。覚えておいても良いと思います。

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