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AIDMAやAISASなど、デザインのお仕事をしていれば耳にすることが多い購買決定プロセス論。購買に至るまでの消費者の心理や行動を理解するのに適しています。

最近はデザイナーといえどもマーケティングの知識が必要だと感じる場面が多くなりました。会議や打ち合わせの席でデザインよりもう少し深い部分の質問をされたり、提案を求められる機会が増えてきています。

そんなときに「専門外だから分かりません」ではせっかくのチャンスが台無しに。代表的な購買決定プロセス論をいくつか覚えておきましょう。

また購買決定プロセス論はコンペのときに重宝します。美しいデザインとその制作意図だけではコンペには勝てません。最近はさまざまな理論に基づいたトータルなコミュニケーションの提案、つまり購買決定プロセスに沿ったメディアを超えた提案が必要になってきています。

「うちの会社は規模が小さくてマーケティングの担当がいない」とか、「コンペではちょっと規模が大きい会社との競争にいつも負けてしまう」とか、「将来独立したい」なんて思っているデザイナーさんたちは、この購買決定プロセス論を覚えておいて損はありません。

「デザイナーはデザインの提案だけをすればいい」なんて時代はそろそろ終わります。(もしかするとすでに終わっているかも?)

デザインの提案にプラスα、クライアントが顧客を獲得するためのプロセスをまるごと提案できるデザイナーを目指しましょう。

    目次

  • AIDMA 日本で最も有名な購買決定プロセス論
  • AIDA 元祖購買決定プロセス論
  • AISAS 電通が提案した今に通じる購買決定プロセス論
  • SIPS SNS時代の購買決定プロセス論
  • パーチェスファネル 従来のプロセスに時間軸を加えた購買決定プロセス論
  • カスタマージャーニー 「量」のプロセスから「一人ひとり」に寄り添った購買決定プロセス論へ


代表的な購買決定プロセス論

AIDMA

aidma

コミュニケーションの開始から購買までの意思決定を、Attention(認知)- Interest(関心)- Desire(欲求)- Memory(記憶)- Action(購買)という5つのプロセスでモデル化したもの。日本で最も有名な購買決定プロセス論です。

購買決定プロセス論はひとつのメディアで完結するとは限りません。交通広告やポスターが「認知」から「欲求」まで、「記憶」はDMやメルマガ、「購買」はWEBサイトといった具合に、役割を分担することも。

自分が担当するデザインがプロセスのどの部分を担うのか、しっかり把握しましょう。携わっている仕事の全体を見ることができる人、その中で求められる役割を理解できる人には案件が集まります。
仕事を理解していて、何を求められているか知っている人って、頼もしいし安心して頼みやすいですよね。

AIDA

aida

Attention(認知)- Interest(関心)- Desire(欲求)- Action(購買)というプロセスを経て購買の意思決定を行うというもの。1898年にアメリカのセント・エルモ・ルイスによって提唱された、もっとも古い購買決定プロセスです。

AIDMAとの違いはMemory(記憶)があるかどうか。その場で決済までもっていくネットショップのようなビジネスに向いているのではないでしょうか。

ダイレクトマーケティングなどのコミュニケーションはAIDAを、ターゲット層の頭の中に「らしさ」を植えつけるブランド論はAIDMAをベースにしています。

AISAS

aisas

AIDMAとAIDAはマス広告全盛の時代に生まれたプロセス。2000年代に入ると人々の生活にインターネットが普及し、ネット情報時代の購買行動を理解するためのプロセスが生まれます。電通が提唱したAISASです。

AISASはAttention(認知)- Interest(関心)- Search(検索)- Action(行動)- Share(共有)というプロセス。AIDMAから欲求と記憶がなくなり、検索と共有が追加されました。興味・関心を持ったらまずは検索、購買後に商品・サービスの感想を共有するというもの。

さすが2000年代に生まれたプロセス。すんなり想像できるし、理解できますね。私は「Share」はあまりしませんが、たしかにAISASの順に行動しまています。

SIPS

sips

2010年代に入ると、電通から新しい購買決定プロセスが発表されます。SIPSです。Sympathize(共感)- Identify(確認)- Participate(参加)- Shere and Spread(共有&拡散)からなるこの購買プロセスは、SNS時代の購買行動をモデル化したもの。

SNSで友人・知人が「いいね」または「Share」された情報に触れるところからコミュニケーションがスタートしています。「いいね」や「Share」をされた商品・サービスに対する共感がプロセスの入り口です。

続いて、共感を持った商品・サービスの情報をネットで検索をします。「本当にいいものなの?」「自分に合っているかな?」「他に口コミやレビューが上がってないかな?」など、ネット上の情報で確認を行います。

確認の後は参加です。「リツイート」や「いいね」といった軽いものから商品・サービスをしっかり応援する「ファン」になるまで参加の方法はさまざま。購買まではいかなくても商品・サービスを「気になっている」ということを友人やフォロワーに発信することも立派な参加です。

最後に情報を共有&拡散することで次のSympathize(共感)につなげ、新しい購買決定プロセスをスタートさせていきます。

パーチェスファネル

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2000年代後半に登場した概念。商品・サービスを認知したときから購買にいたるまでの意識と各段階で残っているターゲット層の人数を「ファネル(漏斗)」の形で表します。

パーチェスファネルは認知(Awareness)- 興味・関心(Interst)- 比較検討(Comparison)- 購入(Purchase)という4段階のプロセス。認知を最上段として購入に向かってターゲット層の人数が減っていく逆三角形を形作ります。

パーチェスファネルはAIDAやAIDMAと関連付けられて考えられ、4段階のプロセスがAIDAやAIDMAに置き換えられた状態で用いられることも。

これまでの購買決定プロセス論との違いは、購買までのステップ=時間軸という視点が加わっていること。

「何人の顧客獲得のためにどれくらいの購入意向者が必要で、そのために興味層が何人、認知が何人必要」なんて考えることも。ステップごとにどんなメディアで何を伝えることが最適なのか、ゴールから逆算する場合にも用いられます。

カスタマージャーニー

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ターゲットが商品・サービスとどんな接点を持ち、どんな経験をして「購入」やその後の「共有・拡散」に至るのか。ターゲットの行動や志向、意識のプロセスを旅(ジャーニー)にたとえた概念です。

これまでの購買決定プロセス論と違うのは、ターゲット一人ひとりと向き合っていること。「ターゲット層」から「ターゲット」へ、コミュニケーションの相手がより明確なものへと変化しています。

AIDMAやパーチェスファネルが「量」の捉え方であるのに対し、カスタマージャーニーは「一人ひとり」に寄り添った購買プロセスを描くことが可能です。そのため、従来より細かく設定されたターゲット像が必要になってきます。理想のターゲット像(ペルソナ)を明確にします。

カスタマージャーニーでは購買プロセスの途中になる「タッチポイント」を可視化するマップが使われます。タッチポイントとはターゲットと情報が出会う場所。ターゲットが購入までのプロセスでどんなタッチポイントでどんな体験をし、どの様に思い、感じ、購入に至るのかをマップで可視化します。



まとめ

代表的な購買決定プロセス論をいくつか紹介しました。デザイナーにとっては専門外のことなので覚えるのは大変ですが、上流工程から安心して任せられる「できるデザイナー」目指して、よく使われるマーケティング用語は頭に入れておきましょう!

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