クリエイティブ・ディレクションを、偉い人だけが携わる上流工程の仕事と思っていませんか?

クリエイティブ・ディレクションは「大手代理店のとっても偉いクリエイティブ・ディレクターって人のお仕事」なんてことはありません。誰でも日々の業務に取り入れることができることです。

デザイナーが自分の作品をもう一段階レベルアップさせるために、日々の仕事にクリエイティブ・ディレクターの目線を取り入れたっていいんです。

ではクリエイティブ・ディレクションっていったい何をするの?
その疑問を解決するには、古川裕也さんの『すべての仕事はクリエイティブディレクションである』という本に載っている方法がとても役立つので、ざっくり紹介します。



クリエイティブ・ディレクションのための4つの方法

『すべての仕事はクリエイティブディレクションである』に書かれているクリエイティブ・ディレクションの方法論は次の4つ。

なかなか難しそうな内容ですが、みなさんが携わっている案件に実際に照らし合わせてみると理解が深まると思います。

1.ミッションを見つける

ミッションは、デザインの業界でしばしば用いられる「課題」とはちょっと意味が違います。例えば「売上を伸ばしたい」とか、「知名度を上げたい」なんてのは課題。つまり「困っていること」が課題です。

クライアントが感じている課題は表面的なものであったり、根本的な問題からズレてしまっていることもしばしば。課題の解決はデザイナーとしての大切なお仕事ですが、課題を生み出している根本の問題を見つけてあげることも同じように大切なお仕事です。

さまざまな課題の根本になる問題を明確にし、誰にでも伝わるようなシンプルな言葉で言語化しましょう。ここで明確化・言語化して具体的な目的にしたものが「ミッション」。クリエイティブ・ディレクションの種になります。

「世界から交通事故をなくす」とか「命をムダにせず大切にしよう」など、ちょっと大袈裟かなって思うくらいのミッションを探します。その企業やブランドが社会に対してできるものごとの中で、最も高度で本質的なミッションを見つけましょう。

2.コア・アイデアを決める

次はコア・アイデアの設定になりますが、その前に企業やブランドの本質について考え、その存在意義を探っていく必要があります。

この企業・ブランドは、いつ、どんな風に、どんなことに役立つのだろう?ミッション同様、本質をワンフレーズにまとめます。

ブランドの価値を定義したり伝えたりするなんて、大手の代理店のクリエイターや超一流のデザイナーにしかできないのでは?なんて思うかもしれませんが、そんなことはありません。

そうではない多くのデザイナーにも、チャンスはたくさんあります。日本には何百万もの企業・団体があり、大手の代理店にお仕事をお願いできるような会社は全体のごくわずか。
埋もれたままの価値を伝えられていない企業や団体、教育機関は山ほどあります。

本質をひと言にまとめたら、それをベースに今回は何をやるのか、何を伝えるのかを考えていきます。ざっくりでもOK。企業・サービスの本質を伝えるために「こういうことをやる!」「こんなことを伝える!」と決めましょう。

その企業・ブランドが将来の社会をどう変えていくのか。それを伝えていくための道具となるのがコア・アイデアです。

まるっきり新しい概念より、普遍的で受け取りやすいコア・アイデアを定義することが成功への近道。
携わる人たちがワクワクするようなコアアイデアを考えられれば、良いコミュニケーションはすぐそこです。

3.ゴールイメージを設ける

アイデアとターゲットの出会いの設計です。制作された広告やデザインと出会った瞬間、ターゲットに何を感じさせたいのか、どう思わせたいのかを決めましょう。

楽しい、嬉しい、ワクワクする、ホッとする、深く考えさせられる、などなど。
制作物に出会った瞬間の、ターゲットの心の動きをゴールイメージとします。よりポジティブで感情的なゴールイメージの設定が、良いコミュニケーションへの近道です。

アイデアとの出会いは感覚的で身体的なもの。ここで受け取られた感覚は、なかなか覆すことができません。
よりポジティブな感情でターゲットがアイデアを受け入れられるように導きましょう。

4.クオリティの管理

最後はやっぱり作品のクオリティです。ここがぐちゃぐちゃだとこれまでの苦労も水の泡。
コア・アイデアと合致していて、かつベストな表現なのか、しっかり見極めて品質を上げましょう。

世の中のキャンペーンの9割が記憶に残らないそうです。

記憶に残るようなサプライズのためには、「びっくりさせる表現」や「納得させる表現」を広告・デザインに組み込むと効果的です。
常識をひっくり返し見る人をびっくりさせるために表現に「異常値」を仕込みましょう。

もしかすると既に紹介したいくつかの記事が役に立つかもしれません。

また、表現に「対立」を含ませて印象に残りやすくする方法もあります。
対立にはさまざまな方法がありますが、以下の記事も参考にしてみてください。



どんな立場のデザイナーにも使える方法

いつもの仕事に是非クリエイティブ・ディレクションを取り入れてみましょう!

クリエイティブ・ディレクションは、大きな仕事をしている大手代理店の社員や超一流のデザイナーだけが必要な能力ではありません。
多くのデザイナーさんが身近な仕事に使える方法です。

それから、すごくざっくり簡単に紹介しています。
クリエイティブ・ディレクションをやってみたい!なんて思った方は、是非『すべての仕事はクリエイティブディレクションである』を読んでみてください。

今回紹介したクリエイティブ・ディレクションの方法論はこの本の前半の一部分。
沢山の実例をもとに充実の内容が分かりやすく書いてあります。

後半で紹介されている実績の話では「九州新幹線のコミュニケーション」について書かれているページがあります。2011年3月の震災のころ、このCMをyoutubeで見て少し勇気をもらったのを覚えています。デザイン・広告系の本なのに感動しました。

デザイナーさんには是非読んでもらいたい一冊です。クリエイターなら間違いなくテンションが上がる一冊だと思います。

私は今回紹介した方法を用いて、デザインコンペに勝ちました。
偶然かもしれないし、クライアントや案件によっては異なるアプローチの方が有効な場合もあるとは思いますが、オススメの方法です。

紙の本で一冊購入しましたが、どうやら電子書籍化されたみたいですね。いつでも読めるようにKindle版でもう一冊買おうかな…

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